なつものがたり
夏祭りのあの夜、
開け損ねたパンドラの箱が開く。
俺は、
笑顔を守ってやりたいのは
笑顔を作ってやりたいのは
果歩だ。
それが例え、果歩にとってどんなにお節介でも。
俺にとっては明るい未来が待っていなくとも。
親友の関係を崩してしまう結果が待っていても、あいつを、好きだという自分の気持ちに
嘘をつき通せないと思った。
「ごめん、百合子。 別れよう。」
百合子と大地に背を向け、声を絞り出す。
ドアノブに手をかけ、走り出す。
カバンも財布も忘れて、どこに行ってんだよ、アホ果歩!
携帯を耳に当て、全速力で、走る。