なつものがたり
身体中の体温が下がったような、
そんな心地。
泣き出しそうな蒲田さんに
青ざめる希鷹。
ごめん。
あたしがここにいるから、きっと蒲田さんと喧嘩になる。
大好きなんだよね、蒲田さんのこと。
あたしは、希鷹のことが大好きなはずなのに。
やっぱり、希鷹の幸せが願えないや。
このまんま、別れちゃえばいいって
そう、考えてる。
そんな自分が嫌だ、
と強く思う。
居ても立ってもいられなくて
すごい勢いでソファを立ち上がり、
玄関に走る。
果歩”
と、呼んでくれた希鷹の声を無視し、
蒲田さん、そして希鷹の兄貴の横を走り抜け家の外へ出る。
この辺の地理もよくわかんないけど、とりあえず家から遠ざかりたくて。
走って、走って。走って。
小さな公園に辿り着いた。