なつものがたり
一番近くにいたかった。
髪の毛も短くして、ピアスだってあけて、洋服だってメンズかぶれ。
残念なことに胸もないから
化粧をしてない日は
高校生男子に見られたことだって少なくない。
希鷹に出会って、ビビっときて。
一目惚れしたその翌日から、大幅イメチェン。
だって、大好きな彼女が同じ大学にいるって言うから。
嫉妬されないように、されないようにって外見は努力してた。
内面は、どんどん汚くなってる。
あの頃より、二年半経って、希鷹と仲良くなった分、
二年半前よりずっとずーっと、蒲田さんに嫉妬してんだ。
他の彼女の時とは違う。
そう、思ってた。
でも、よくよく考えたら蒲田さんでも蒲田さんじゃなくても、希鷹の横に自分以外の女子がいるのが、嫌だったんだ。
いつのまにか、心は真っ黒。
自分にも、こんな感情が隠れていたことを、まざまざと見せつけられた感じ。
でも。
どうやっても、希鷹を嫌いにはなれない。
「…好き、」
あまりにも自然に出てきた言葉と、涙が夏の夜空に吸い取られてゆく。
静かな、静かな 夜。