なつものがたり
東京を出発した車は
どんどんと北へ真っしぐら。
途中、カラオケ大会をしたり
サービスエリアに寄って、
ソフトクリームとイカ焼きを
半分こして食べる。
なんだかいつも以上に楽しくて、いつも以上に希鷹が私を女の子扱いする。
夢のような時間。
「果歩。ニヤニヤしすぎ。」
「だって、たのしーじゃん!
夏休み~って感じ。」
希鷹はソフトクリームを食べるのを一旦やめ、
あたしをじっと見つめる。
やっぱり、いつもと違う。
胸騒ぎがする。
「希鷹くん、どったの?」
「んいや。果歩、お前さ、彼氏作って?」
「・・・・・え?」
ポンポン とあたしの頭を撫でて、
じゃ、行きますか。海。
と、立ち上がる希鷹。
「よーわからんわ、ボケーっぃ!」
このモヤモヤが。
希鷹の寂しい笑顔が見てられなくて
ふざけかまして、蹴りをいれる。
「やったな、このやろ」
頭をぐしゃぐしゃにされ、
お互い笑い合う。
夏は、始まったばかりなのに。
ふとそんなセリフが頭に浮かんだ。