なつものがたり
「希鷹、」
「ん?」
「あたし、彼氏いないよ。」
「え?!」
「あれ、ただの友だち。
さっきも偶然会ったの。」
「…まじか。」
「うん。でもさ、好きな人はいる。」
「…そっか、」
少しだけの意地悪。
希鷹は、今、何を考えてる?
「あたしさ、」
もう、一言が出てこない。
心臓がバクバク言って、
背中に変な汗が出てくる気がして。
…全身が熱を持って。
苦しい。
もし、嫌われたら、
そう、考えると怖くて仕方ない。
さっきの幸せな感覚を、手放したくない、
この、温もりを手放したくない。
「果歩!
ちょっと、歩こ?」
急に立ち上がった希鷹に手を取られ、手をつないだままブランコから離れる。
キーコ、キーコ、という音が優しく響く。