なつものがたり
「果歩、鼻水つけんなよ?」
顔をあげるのは恥ずかしいから、上を向けないけど、また少し無理をしたような希鷹の声が落ちてくる。
「あたしの前では、そのまんまでいてよ。」
「・・・ありがと。」
希鷹の手が、あたしの背中に回り、強く強く抱きしめられる。
「果歩?」
「ん?」
「心臓バクバクいってんぞ?」
「ちょ!」
気付かないふりをしていたことを指摘され、カーッと顔に血がめぐる。
「ちがっ!離せ離せ!!」
あたしの要望とは真逆に、希鷹の腕の力はドンドンと強くなる。
「嫌だね」
「ドエスか!!」
「だって、ありのままの俺でいーんだろ?」
「はー?!ちょ!苦しい!ギブっ」
背中を叩いてバタバタ暴れると
バッと急に手を離される。
「ぎゃっ」
急すぎて、体制を崩すあたしの腕を捕まえ、切れ長の目がじーっと見つめてくる。
今度は、どーせ、顔が真っ赤!とか言うんだろ。
だけど、目を逸らしたら負けな気がして、じーっと見つめ返す。
「果歩。」
「なんだよ!」
「俺さ、お前のこと、誰よりも、何よりも好き。」
「…へ?!」
え?!
は?!
はぁ?!
へ~っ?!
何て、言った?
「お前に彼氏がいないなら、ぜってぇ俺のこと好きにしてみせる。
お前のこと、だれより幸せにする。」