なつものがたり
「気付けよっ!ばかっ!チャラ男っ!!」
涙交じりに俺を遠慮なく叩いてくる果歩は、やっぱりいつもの果歩で。
だけど、そんな果歩が愛しくてたまらなくて。
力いっぱいに抱きしめた。
いままでの彼女なら、流れでなんとなくしていたキスも心臓が飛び出そうなくらい緊張して。
結局、顔をそらしてしまった。
俺をまっすぐに見る二つの目。
こんなに近くに、
こんなに近くで、俺のことを待っていてくれたなんて。
今までの果歩との思い出が走馬灯のように蘇る。
「…ありがと。」
こんなバカな男を、見捨てず好きでいてくれて、サンキュ。
「離せ離せっっっっ」
急に俺の腕の中で暴れ出した果歩を見たら、顔が真っ赤で目がウルウルしてて。
ボソッと、
もう、無理
と呟く。
「なにが無理?」
と、意地悪く聞くと
「幸せすぎてわけわかんない!!」
と逆ギレのテンションだけど、そんな言葉に俺も顔が火照る。
「果歩?」
「なんだよ!」
キレ気味な彼女を真っ直ぐ見つめる。