なつものがたり


「こっち、向いて。」




「ん、」



目が合うと、さらに真っ赤になり、目を閉じる果歩をからかいたくなった。








耳元で、


「好き。」







と、つぶやく。







そのまま、耳を少し舐める。









「ぎゃっ?!」











「どした?キスされると思った?」


「は!はぁ?!思ってないし!!!!!」






テンパり、戸惑い、ジタバタする果歩。




やべえ、無理なの、俺だわ。

やっぱ我慢とか、できない。





チュッと軽いキスをする。







全身がカッと熱くなる。

こんな、キスくらいで。





「ぎゃーーーーー!」

腕の中にいた果歩は、スルリと逃げて行き滑り台の影に隠れた。








俺もふらふらとブランコにしゃがみ込むように座る。

今ので寿命3年縮まった感じ。




心臓が静まらない。






好きになるって、こういうこと?


風が吹くとザワザワと音を出す公園の木々に、笑われているような気分になる。




俺、かっこわりぃ。




けど、それでも良いんじゃないかって思ってしまった。






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