なつものがたり
キス、
した?!
それさえも、よくわからなくて。
希鷹のそばにいたいのに、いたくなくて、腕の中から飛び出してしまった。
滑り台の後ろから、そっと希鷹を盗み見ると、うなだれているような姿勢。
もう、だめだ。
両思いとか、したことないし!
キスも、
はじめて。
心臓が、うるさすぎて希鷹の傍にいたくない。
だけど、触れたくて。
抱きしめて欲しくて。
好き、なんだなぁ。
どうしようもないくらい。
そう、心の中で思うだけなのに また息苦しくなる。
こんな、女子っぽい自分がいたことにも驚く。
ザッザッザッ
と、芝生を踏む足音が近づいて来る。
「隣、座っても、いい?」
「…う、ん。」
ぎく、しゃく。
希鷹が隣に腰を下ろし、手をつないできた。
暖かい、あたしの大好きな手だ。
「果歩、」
俯く頭を小突かれる。
「…ん?」