君の知らない空
「あれ? チャラって今日は休みだっけ?」
「ああ、そうみたい。体調不良って課長に電話があったらしいけど、怪我したらしいよ、詳しくは聞いてないけどね」
江藤が休むなんて珍しい。
少々の熱なら無理してでも出てくるし、滅多な事じゃ休まない。よほど調子が悪いのだろう。
「怪我? 昨日は元気だったのにね」
「彼氏のいる女の子に手を出して、報復に遭ったのかもね。チャラって可愛い子には見境ないから」
優美の言葉に、背筋がぞくっとした。
昨日、ひったくりした男性らの低い呻き声が耳に蘇る。恐怖心を伴って。
あの声は、彼が男性らに何かをしたことによって発せられたものだ。
理由はどうあれ、江藤も同じようなことをされたというのだろうか。誰かに暴力を振るわれたのだろうか。
「怖いこと言わないでよ」
本心から出た言葉、声が僅かに震えていた。
もう、あんなことに遭いたくない。