君の知らない空
「おおっ、古賀ちゃんと高山ちゃん!
早よ帰りよると思ったら、ここにおったんか?」
まだお酒は呑んでないのに、呑んでるような口調。丸い顔に眼鏡の奥の目を細めて、にんまりと私たちを見ている。
我が素材チームのチーム長だ。
「あ……お疲れ様です」
優美と声を揃えたら、チーム長の後ろに課長と計器チームのチーム長が控えていた。
そして何故か、私たちはテーブル席から座敷に移ることになってしまった。課長と素材と計器の両チーム長と一緒なんて、何を話せばいい?
と思ってたら、
「古賀ちゃんと高山ちゃん、江藤のこと聞いたか? 」
素材チーム長が声を潜めた。
「はい、びっくりしましたよ、江藤君が喧嘩なんて、縁無さそうなのに……」
優美が大きく頷く。
あれ?
山本さんから聞いたのと違う?
「喧嘩じゃなくて一方的に暴行されたんじゃなかったの? 私はそう聞いたけど?」
つい疑問を口にした。
誰から聞いたなんて言えない。
まぁ、言わなくても分かるだろうけど。
「そうや、いきなり絡まれて殴られたらしいやん、オヤジ狩りっちゅうやつか? 怖いなぁ」
「いやいや、江藤君はまだオヤジじゃないでしょう」
課長が冷ややかに笑う。
やっぱり課長の笑い方は好きじゃない。聞いていると耳がむずむずする感じ。黙ってたら紳士的な雰囲気で悪くないのに。