君の知らない空
家に帰ったら、母が呆れた顔で出迎えてくれた。
私だって、昼頃には帰るつもりだったんだから。と言いたい気持ちを飲み込む。
「脚、どうだったの? あんまり遅いからたいしたことないと思ってたのに、意外と大袈裟な格好ね」
「ごめん、帰りに友達に会ったから、お昼ご飯食べてきた。脚は捻挫だって、次は一週間後に来てって言われた。松葉杖は借り物」
桂一は友達……なのかな?
まあ、いいや。
「そうなの、捻挫って意外と大変なのね、月曜日から仕事行けそう?」
「うん、友達が会社まで送ってくれるって言ってくれてるから」
と言うと、母の表情がぱっと明るくなった。何かを察したように。安心したように。
「よかったじゃない。いい友達だね、ちゃんとお礼言わなきゃダメよ」
「分かってるよ、ちゃんと言って……」
あれ?
言ったかなぁ?
「お母さん、メールしたんだけど気づかなかった? 携帯の意味がないじゃない」
「え? ごめん、音消してたから」
バッグから携帯電話を出して見たら、数件のメール。そのうちの半分が母からだった。
「お母さんばっかり……」
ぽつりと言ったのに、母の耳にはちゃんとキャッチされていた。
「だって心配してたのよ、遅いから何かあったんじゃないかって」
母が口を尖らせる。
何かあったら……
どこかで聴いたような言葉が、胸に引っかかった。