君の知らない空


部屋に入って、ベッドに寝転んだ。
頭の中には、桂一と彼の姿が浮かんでる。かき消すように、ぎゅっと目を閉じたけど消えるはずない。


もやもやしたまま、携帯電話を手に取ってみる。


優美からのメール、


『大丈夫? 病院行ってきた?
土日ゆーっくり休みなよ!!
オバチャン、怖い……』


オバチャンが怖いのは、今に始まったことじゃない。

それとも、何かあったのかな?

気になりつつ、何て返信しようかと指を空で泳がせる。


『お疲れ。病院行ってきたよ。
心配かけてゴメンね。
ただの捻挫なのに、大袈裟な格好にされて恥ずかしいよぉ……
月曜日は絶対行くからね!
オバチャンに負けるな!』


と返信した。


でも、やっぱり気になる。

オバチャン、どうしたんだろ?

だって、優美は大丈夫。
入社以来、オバチャンに目を付けられたことはない。上手に甘えることができるから、逆に可愛がられてるぐらい。


ということは、オバチャンの矛先は優美以外の誰か?


すぐに浮かんだのは、美香。


美香からもメールが届いてた。


『橙子さん、こんにちは。
体調どうですか?
決して無理しないで、
ゆっくり休んでくださいね。』


とりあえず、ほっとした。
そこに、オバチャンのことは一言も書かれてない。


そうだ、オバチャンたちは仕事が忙しくてカリカリしてるんだ。きっと。


美香にも、優美と同じようにメールを返信した。

< 152 / 390 >

この作品をシェア

pagetop