君の知らない空
部屋に入って、ベッドに寝転んだ。
頭の中には、桂一と彼の姿が浮かんでる。かき消すように、ぎゅっと目を閉じたけど消えるはずない。
もやもやしたまま、携帯電話を手に取ってみる。
優美からのメール、
『大丈夫? 病院行ってきた?
土日ゆーっくり休みなよ!!
オバチャン、怖い……』
オバチャンが怖いのは、今に始まったことじゃない。
それとも、何かあったのかな?
気になりつつ、何て返信しようかと指を空で泳がせる。
『お疲れ。病院行ってきたよ。
心配かけてゴメンね。
ただの捻挫なのに、大袈裟な格好にされて恥ずかしいよぉ……
月曜日は絶対行くからね!
オバチャンに負けるな!』
と返信した。
でも、やっぱり気になる。
オバチャン、どうしたんだろ?
だって、優美は大丈夫。
入社以来、オバチャンに目を付けられたことはない。上手に甘えることができるから、逆に可愛がられてるぐらい。
ということは、オバチャンの矛先は優美以外の誰か?
すぐに浮かんだのは、美香。
美香からもメールが届いてた。
『橙子さん、こんにちは。
体調どうですか?
決して無理しないで、
ゆっくり休んでくださいね。』
とりあえず、ほっとした。
そこに、オバチャンのことは一言も書かれてない。
そうだ、オバチャンたちは仕事が忙しくてカリカリしてるんだ。きっと。
美香にも、優美と同じようにメールを返信した。