君の知らない空

「私の会社の上司が、今年になってから次々と入れ替わってるんだけど……関係ある? 会社が乗っ取られたら、どうなるの? 私たち、クビになるの?」


何から聞けばいいのか分からない。
ただ胸の中にあるのは、
『どうしよう』という不安だけ。


「上層部が代わるだけで済むんじゃないかな……とは思うけど、待遇なんかが変わってくるかもしれないしなぁ」


桂一が眉間にしわを寄せて、私を見てる。不憫とでも言いたいのだろうか。


「ねぇ、乗っ取りしてるのは、桂の会社じゃなくて桂の会社の関連会社? じゃあ桂の会社は何をしてるの? 私の会社がヤバイって、いつから知ってたの?」


溢れ出す不安と不満を桂一にぶつけた。
だって、桂一に騙されてたような気分。
私の会社が乗っ取られると分かってて、桂一はずっと黙ってたのかと思うと余計に腹が立ってくる。


「俺だって、知らなかったよ。今日、迎えに行って初めて分かったんだから。乗っ取りの話は聞いてたけど、まさか橙子の会社だなんて……知ってたらすぐに話してるよ」


口を尖らせて、ふいと目を逸らした桂一の言葉が引っかかった。


『今日迎えに行って初めて……』


私を迎えに来てくれた桂一が美香とすれ違った時、明らかに不自然な態度だった。まだ美香のことを何にも聞いてない。


「美香のこと? 桂一とどういう関係なの? どうして隠し事ばかりするの? また機密とか言うつもり? 急にバラしたりするのやめてよ、隠すなら全部隠してくれてた方がマシだよ」


はっきりしない桂一の言葉と態度に、苛立ちは募るばかり。何もかもが疑わしく思える。

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