君の知らない空
「美香はどうなの? 危険と関係あるの? すごく可愛くて素直で、いい子なのに……美香にはボディガードみたいな人たちはいるの?」
もし美香にも、ボディガードのような人たちがいるのなら……
江藤が言ってたように、私がひったくりに遭ったのも、江藤が暴行されたのも美香の指示によるものではないのか。
「彼女にもいるよ、社長の娘だから。でも俺の社長みたいに命を狙われてるようなことはないから……」
言いかけて、桂一が口を噤んだ。
マズそうな顔をしている。
「命を狙われる? どうして? 何か悪いことでもしてるの?」
「あ、べつに……そんな悪いことはしてないけど、社長だから何があるか分からないだろ」
「ウソ、何なの? 危険だとか、狙われてるとか、普通の会社でそんなことかんがえられないよ。何かヤバイ仕事でもしてるんじゃないの?」
「ん……そりゃあ、会社を乗っ取ったりしてたら誰かの恨みぐらい買うだろ? それに社長が秘書やボディガードぐらい連れてても不思議じゃないだろ?」
桂一が懸命に、私を言いくるめようとしているのが分かる。その顔には明らかな焦りと困惑の色が映ってる。
会社の乗っ取りも美香のこともすべて、桂一が話したことをすぐに整理して受け入れることは出来ない。
でも、事実をすべて知りたい気持ちが私の背中を押してくる。
これは勇気なのだろうか。
「全部教えて、絶対に誰にも話さないから、私の中で留めておくから。中途半端なままで会社をクビになるのもスッキリしないし」
私はぐいと身を乗り出して、桂一の顔を覗き込んだ。