君の知らない空
「とりあえず気にしないで、お菓子食べてよ。私たちは自分の仕事だけこなしてたらいいと思うよ。余計なことには関わらない」
と優美は笑って、箱からお菓子を摘まんで口に放り込んだ。
お菓子の配給は午前と午後の一日に二回、優美と私は互いに持ってきたお菓子を分け合っている。分けてくれるのは優美の役目、最近優美の持ってくるお菓子の量が多くなったと思う。
「そうだけど……あまり動かないのに、こんなに食べてばかりじゃマズくない?大事な時期なのに」
結婚を控えているというのに、優美は体型を気にしてる様子も見せない。元々太りにくい体質らしいけど、もう少し気にしてほしいと私の方が心配してしまう。
「うん、いいの。ここでは解禁、だってストレス溜まるでしょ? 他で締めてくから大丈夫」
思ったとおり、余裕の笑みだ。
でもストレス発散の方法が食べることって、結婚を控えている優美には危険だと思う。
「ドレス選びに困っても知らないよ?」
意地悪を言ったつもりで、じっと顔を覗き込んだら優美はにっと笑って舌を出した。
「橙子こそ、どうするの? 当分ジムにも行けないし彼にも会えないんだよね……せっかく近づき始めてたのに、ついてないね」
「そうだよ、ついてないよ……彼とは縁が無かったと思った方がいいのかなぁ」
「何言ってんの? まだまだ頑張れるって。その格好でジム行ったら彼の気を引けるかもよ? 怪我どうしたの? から始まるかも」
優美は熱心に語ってくれるけど、怪我のことは彼には話すまでもないんだなぁ……
そういえば、彼にはいつ会えるんだろう。捻挫が治ってジムに行くまでに、桂一が彼を見つけてたら……どうなるんだろう。