君の知らない空
「だったら、誰が美香を……」
言い掛けて口を噤んだ。
ふと思いついたのは、美香の父親や会社を乗っ取ろうとしている人たちの存在。
「高山? どうした? 何か分かったか?」
「え、何にも……」
さらっと江藤に言ってしまいたくなるけど、言ってはいけない。桂一に誰にも言わないように口止めされているから。
私ひとりではどうすることも出来ないけど、江藤に話すことで解決の糸口が見えるかもしれないのに。
桂一を裏切ることは出来ない。
「白木はどうして、ウチの会社選んだんだろうな……」
ぼそっと江藤が言った。
「さあ……そこまで聞いてないから分からないよ」
それは、美香も会社の乗っ取りに関与しているからだろう。
でも乗っ取りを企てているのは美香の父親だ。父親の会社がすべて手を下すのなら、美香は関係ないはず……美香が入社する必要はなかったのでは?
どうして美香は入社したんだろう。いや、入社する必要があったんだろうか?
美香の入社は父親の指示なのか、美香の意思なのか。
美香を陥れようとしている人物は、美香が社内に居たらマズイのだろうか。
そんな事、美香には直接聞けない。
次々と浮かんでくる疑問に圧されて、江藤と話していることさえ忘れてしまいそうになる。
「高山? おーい、どうした? 眠くなってきたか?」
あまりの沈黙に痺れを切らして、江藤が呼び掛ける。
なぜか思い出されたのは、江藤のことを好きかもと言った美香の顔。