君の知らない空
◇ 兄妹の香り
翌朝、美香からのメールで江藤との交際報告があった。江藤の話してたとおり、美香から告白したという。
ただひとつ驚いたのは、江藤も美香が好きだと言ったこと。昨日の江藤からの電話ではそんなこと言ってなかったのに……
でも、だからこそ美香が襲わせたと思いたくなかったのかも? と思うと納得出来た。
敵は多いかもしれないけど、バレないように障害を乗り越えて、本当に上手くいったらいいなと応援しようと思った。もちろん江藤には、何事も無いようにと願って。
平日、休暇を取ると朝の時間がゆったり進むような気がする。のんびりと準備してたら母に呼ばれた。
「公園の横に水色の車が停まってるけど、お迎えじゃないの?」
ベランダで洗濯物を干していたら、車が停まっているのが見えたらしい。教えてくれるのはありがたいけど、毎日迎えにきてくれてる桂一を母に見られていたと思うと恥ずかしい。
どうして母親って、必要以上に知りたがり屋なんだろう。
とりあえず、慌てて家を飛び出した。
すると運転席にいた桂一が私の姿を見つけると、車から降りて駆け寄ってくる。
「おはよう」
と言って、桂一はさりげなく私のバッグを取り上げてくれる。きっと今も、母が後ろからこっそり見ているはず……
「おはよう、待たせてごめんね」
「いや、大丈夫。今着いたとこだから」
早足で進もうとするけど、松葉杖だから無理がある。早くこんな物は手放してしまいたい。
隣を歩く桂一が不思議そうに顔を覗き込むのを無視して、一目散に車に向かった。