君の知らない空
エレベーターが7階で停まる。
もしも扉が開いた先に、目の前に彼らがいたら……どうしようかと思うとドキドキする。
緩やかに扉が開いた。
しかし、そこには大きなフロアの案内図が壁に掲げられているだけ。誰もいないし、人の気配さえ感じられない。
とりあえず、ほっとしたけど彼らはどこに行ったのか。
病棟はエレベーターを挟んで、東と西に分かれている。ほとんど白しか感じられない視界の真ん中、左か右かどちらに行くべきか……と迷いつつ耳を澄ます。
コツコツと硬い音が聴こえる。
辛うじて聴き取ることの出来るほどの微かな足音は、案内図の掲げられた壁の左側から響いてくるようだ。
次第に遠ざかっていく足音を追い、私は東病棟の方へとくるりと向き直った。
まっすぐ続く廊下の先に人影が映る。
見つけた!
距離を詰めようと急ぐ。気づかれないように、足音を立てないように注意しながら。集中しているからか、緊張感からか、不思議と足の痛みなど気にならなくなっていた。
真剣に後を追いながら、廊下に並んだ病室の開いている扉から中を覗く。病室は6人部屋のようだけど、彼らはこんな病室に入っていくのだろうか。
と思いつつ、廊下に視線を戻すと彼らの姿がない。
どこかの病室に入った?
急いで彼らの消えた辺りへと向かうと、周りの病室の扉は閉まっている。この辺りの病室は個室のようだ。
たぶん、この辺りの病室に入ったと思うんだけど……と、キョロキョロしながら廊下を彷徨う私は明らかに不審者だ。
途方に暮れ始めたころ、廊下に怒声が漏れ聞こた。低く篭った声は、目の前の病室から聴こえてくる。
私はゆっくりと扉に近づいた。