君の知らない空
病院を出て、再びバスに乗った。
行き先はショッピングモール、そこから歩いて10分ほどのにある住宅地。沢村さんに教えてもらった小川亮の住所だ。
じんじんと足が疼いている。昨日から調子に乗って、歩き回り過ぎたせいだろう。痛いけど、今は彼の無事を確認したい気持ちが優っていた。
しばらく歩くと、あのパン屋さんが見えてきた。周と名乗った男性と話したベンチが目に留まる。小川亮に近づくなと言った彼の冷ややかな目つきが脳裏に蘇って、背筋がぞくっとした。彼は本当に危険だと言わんばかりの表情をしていた。
とりあえず少しだけ休みたくて、パン屋さんに入った。適当にパンを買い、店先のベンチに腰を下ろす。もう立てないかもしれないと思うほど、足の痛みが全身に沁みてくる。
空を仰いで大きく息を吐く。目を閉じようとした私の耳に、車の近づいてくる音が響いた。
そちらへと振り向くと、白いセダンと黒いワンボックスが猛スピードでやって来る。2台の車は、あっという間に目の前を通り過ぎていった。
これから私が向かおうとしている小川亮の住所の方向へと。
まさか!
私は2台の車を追った。
もちろん追いつく訳はないし、走ることもできないけど、少しでも早く彼の住所へ。
角を曲がると、2台の車が小さなアパートの前に停まっている。少し離れた路上に水色の小型車が停まっているのを見つけて、私は足を止めた。それは桂一の車だったから。
水色の小型車の近くに立つ二人の男性。彼らの元に黒いワンボックスから降りた男性が歩み寄り、何やら告げると二人の男性が頷いている。
二人の男性のうち、一人はよく見覚えのある背格好。間違いなく、あれは桂一だ。
私は、そっと角に隠れた。