君の知らない空

◇ 晴れない疑惑



日曜日は一日中、家に引きこもっていた。母に足が痛いと言うと、自業自得だと返されるに決まってる。黙って軽く家事を手伝ったり、部屋に籠っていると母の機嫌はよかった。


月曜日の朝、迎えにきてくれた桂一は浮かない顔をしていた。笑顔で挨拶してくれたけど、その後は口を閉ざして運転さはてる。時折見せてくれる表情が、明らかに曇っている。


「昨日も帰りが遅かったの?」

「うん、まあ……仕事だから。普段融通が利くから、たまにはこんな忙しいことがあっても仕方ないよ」

「人探し? こんな小さな町なのに、なかなか見つからないものなんだね。その人たちがもう、この町から出て行ってしまったとは考えられないの?」

「それは……どうなんだろうな、この界隈を探せとしか言われてないから、俺はそれに従って探すしかないんだよ」


ハンドルを固く握り直した桂一の横顔は、確かに疲れている。もう話したくないと言いたげに、口を結ぶ。今、いろいろと聞き出そうとするのは悪い。そう思っていたら、桂一が口を開いた。

「もうすぐ、仕事の方がつきそうなんだ。そしたら俺、また新しい仕事探そうと思う。今度こそ真剣に」


普通なら、また転職するのかと思うところだろうけど、今回の場合は話が違う。人探しの仕事、それも危険を伴うような人を探す仕事なんて続けていけるはずはない。


「うん、私もそれがいいと思うよ。くれぐれも無理しないでね」

「ありがとう、ホントに俺って馬鹿だけど、信じててほしいんだ」


ようやく桂一は、強張った顔を綻ばせた。

会社としての方向性に反することになるのだろうけど、桂一が無理をして探すことはないと思う。自分の事を優先に考えていてくれればいい。
桂一の安否を心配しながらも、必死になって探してほしくないのが私の本心だった。



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