君の知らない空
おばさんは観念したように大きな溜め息を吐いて、彼の隣に座った。
「亮君、何か話したの?」
と、おばさんが彼に肩を寄せる。彼はにやりと笑いながら首を傾げて、オレンジを口に頬張った。
「もう、何してんのよ、しょうがないわね……ハルミちゃん、何が聞きたいの?」
ふくれっ面だけど笑顔で、おばさんが問い掛ける。
私の母と年は変わらないと思うのに、結構可愛らしい雰囲気の人だと思う。なんとなく母に似ているような気がするのは、髪型が似ているからだろう。
「美香のお父さんとお兄さんが殺し屋を雇って親子喧嘩してるって話してくれましたよね? お父さんはお兄さんを狙ってはいないんですよね? 美香も、お兄さんが会社に入社させたんじゃないって、本当はおばさんも知ってたんじゃないですか?」
決して怒ってるわけじゃない。ゆっくりと丁寧にと心がけながら尋ねた。おばさんを不快な気持ちにさせないようにと。
顔を上げた彼が、何か言いたそうに目を丸くしてる。おばさんはくすっと笑った。
「もちろん知ってるわよ、亮君に全部聞いたの?」
彼が話したことを言ってもいいものかと悩みながら、ちらりと彼を窺う。彼は優しい笑みで答えてくれた。
「そうだよ、僕が話した。中途半端に知ってて、気になってるたみたいだから教えたんだ」
「はい、全部なのかわからないけど……気になってたことは、だいたいわかりました」
「ホントにしょうがないわね……亮君って、そんなにお喋りだったかしら?」
彼の顔を覗き込んでるおばさんは、私なんかよりも彼のことを知ってる。そう思うと、二人の関係が羨ましい。