君の知らない空
食事を終えてお風呂を済ませ、部屋に戻った私はベッドの上。携帯電話を手にしたまま、ぼんやりと天井を眺めていた。
とても大切な何かを考えていたはずなのに、いつの間にか何にも考えられなくなっていく。これが現実逃避というものかもしれない。
それでも避けてばかりはいられずに、渋々メールを確認し始める。もちろん、桂一からのメールには触れられない。
優美からのメールによると、課長の葬儀は家族葬に急遽変更となったため参列も手伝いもしなくていいらしい。正直なところ、少しほっとした。
その後に届いている優美からのメールには、オバチャンのことが書いてある。内容はもちろん、美香に対するオバチャンの言動について。課長の件は美香が関与しているのではないかという憶測が絡んでいる。
優美はメールの最後に、自分には美香を庇うことはできないと書いている。さらに、私に美香と接する際には気をつけるようにと付け加えていた。
確かに課長の件はオバチャンの憶測ではなく、実際に美香の依頼によって亮が動いたものらしい。
でも、私には美香に対する悪意はさほど感じなかった。それは亮が関係しているからだろう。
美香からのメールを開いた。
『体調はいかがですか?明日は出社できそうですか?話したいことがあります』
話って何だろう?
課長のこと?
亮のこと?
いや、オバチャンのこと?
まさか課長みたいに……などと嫌な考えばかりが浮かんできて、収集がつかなくなっていく。
すると突然、手の中で携帯電話が震えた。驚いて落としそうになるのを、辛うじて受け止める。
桂一からだ。