君の知らない空
◇ 捻れた関係
携帯電話をパンツのポケットに入れようとするけど、両手を縛られて上手く入れられない。立ち上がってソファにもたれ掛かり、ポケットに狙いを定める。
もう少しのところで、携帯電話が手から滑り落ちた。
危ない!
叫びそうになって、思わず息を呑んだ。
携帯電話は眠っている綾瀬の顔を掠めて、床に叩きつけられる。いかにも痛そうな音を響かせて。
ぎりぎり当たらなくてよかったと、綾瀬の顔を窺いながら屈み込む。再び両手を伸ばすのと同時に、綾瀬の瞼がぴくりと動いた。
綾瀬が目を覚ます。
ゆっくりと瞼が開いて、空に泳がせていた視線が私へと注がれる。手足を縛られていることに気づいたのか、綾瀬は眉間にシワを寄せた。