君の知らない空


「あの……いつも傍に居た人たちはどうしたんですか?」

「よく知ってるな」


私を見上げた綾瀬の目が怖い。どうして知っているのかと言いたげにも見えて、何て返せばいいのか困ってしまう。


「いえ、たまたま……以前に見かけたことがあるので……」

「そうだったな、市民病院で会った。あの時、君は松葉杖を持ってたよな?」


綾瀬の言葉に血の気が引いた。
すれ違っただけだから覚えてるはずないと思ってたのに、ちゃんと覚えてるなんて。


「そんなに驚かなくてもいい、たまたま覚えてただけだ」


悪意はなさそうだけど、驚いた。盗み聞きしてたことがバレたのかと思ったから。


それにしても、綾瀬の格好が不憫でならない。厳めしい男らを従えて、颯爽とした姿とはまるで別人だ。


「くそ……ヤツらが俺を騙したんだ……必ず見つけ出して始末してやる」


綾瀬の口から悔しげに吐き出された言葉に、ぞくっとする。


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