君の知らない空


やがて先輩たちは、菅野がどこからか呼び寄せた部下たちに連れられて出て行った。


「お父さん、ありがとう」


彼らを見送る菅野に、美香が言う。


どうして菅野をお父さんと呼ぶんだろう? と不思議に思っていると、白髪交じりの綾瀬が兄の綾瀬に手を差し伸べた。目を逸らす兄の綾瀬に、美香が縋った。


「兄さん、お父さんを許してあげて。兄さんが捕まってることを話したら、真っ先に駆けつけてくれたの」


美香は、綾瀬のこともお父さんと呼んでいるようだ。訳がわからずに見守る私に、亮が耳元で告げた。


「彼女の本当の父親が菅野さん、お兄さんとは血の繋がってない兄妹なんだ」


なるほど、お母さんが綾瀬さんと再婚したとは聞いていた。お母さんの前の旦那さんが、菅野さんだったんだ。


「僕は菅野さんに雇われた。彼女を守り、彼女の依頼を請けるのが仕事」


私の手を握り締める亮の冷ややかな目が捉えているのは、美香たちでも私でもなく桂一。桂一も負けないぐらい険しい顔で、まっすぐ亮を睨んでいる。



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