君の知らない空
今日で優美は退職する。
社内の混乱は終息したけど、結婚を機に気持ちの区切りをつけたいと優美は退職を決意した。
優美が辞めてしまうのは、本当に寂しくて辛い。
一日のうち職場で過ごす時間は長い。その時間を一緒に過ごしてきた優美が居なくなるなんて、今は想像が出来ない。話し相手がいなくなったら、どうなるんだろうという不安もある。
何よりもオバチャンにひとりで対応しなければならないのが、もっとも不安かもしれない。
「古賀さん、お疲れ様。また働きたくなったら、いつでも相談してよ」
と言って、江藤は優美に餞別を手渡した。
さすが江藤、有志の餞別とは別に個人的に用意したようだ。
「うん、ありがとう。その時はお願いするよ、江藤も頑張りなよ。それと、橙子のこともよろしくね。オバチャンから守ってあげてよ」
「もちろん、任せてよ」
ガッツポーズを見せる江藤に、安心感と頼もしさを感じる。
「よし、安心した。橙子、頑張るんだよ」
「ありがとう、優美。幸せになってね」
溢れてきた涙には、寂しさよりも嬉しい気持ちが滲んでいた。