君の知らない空


もう、桂一が通勤時に送迎してくれることはない。私の足の怪我が治ったという理由もあるけど、桂一が再就職したからというのが最大の理由。


『ケリがついたら会社を辞めて……』と話した通り、桂一は美香の兄の会社を辞めた。


新しい就職先は私の会社と取引のある計器メーカーだというから驚いたけど、今度こそ無理をせず長く続けてほしいと願わずにはいられない。


時々、桂一からは仕事の近況報告や他愛無いメールが届く。とくにしつこく交際を迫る内容でもなく、ごく普通の友人としての内容だから私も友人として返事をしている。


たぶん、桂一はわかってくれているんだと思う。私の気持ちもすべて。申し訳ない気持ちもあるけど、自分自身の気持ちに嘘は付けない。


桂一は私に、いろんなことを教えてくれた。一緒にいた時間は、貴重な思い出。


都合がいいかもしれないけど、これからもいい友達でいたい。




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