君の知らない空


知花さんと赤ちゃんに会った帰り、ショッピングモールまで足を延ばした。


やはり、土曜日のショッピングモールはカップルや家族連れが多くて混んでいる。私はアイスクリーム屋さんに向かって、通路を歩いていた。


「高山さん、こんにちは」


ふいに呼び止められて振り向くと、沢村さんが微笑んでいる。一心不乱に歩いていたから少し驚いたけど、私も笑顔で返した。


あれ以来、沢村さんに直接会うのは初めて。


亮のことを密告したのは自分だと謝罪のメールがあった後、さらに電話が掛かってきた。電話の向こうで泣きながら何度も謝る沢村さんは、誰かに脅されたのかと思うほどだった。


ジムの出入り口を臨むカフェの窓際の席、私たちは腰を下ろした。


「本当に申し訳ありませんでした」

「いいんです、もう終わったことだから本当に気にしないでください」


何度も平謝りする沢村さんを見ていると、私の方が申し訳なくなってくる。


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