君の知らない空
♯2 前に進む気持ち
◇ 宴会の後
否応なしに指導員をさせられることになったけど、思ったほど大変なこともなかった。
でも、いつも何気にしてる業務を言葉にするのは難しい。マニュアルを見せて、分かりやすいようにと噛み砕いて伝えようとするが、なかなか……
私が言葉に詰まった時は
「高山さんって、家近くですか?」
と、白木さんが沈黙を破ってくれる。
なかなか気が利く子だ。
「あ、うん、まぁ……近くかな」
「電車ですか?」
「そう、夕霧駅からだから電車で10分ぐらい。白木さんは?」
優美の事前情報で車通勤だと聞いていたけど、話の流れから聞くべきだろう。
「私は車で10分ほどなんです。
私、人ごみが苦手で……混んでる電車とか乗ると気分が悪くなるんです」
まぁ……
私なんて毎日乗ってるのに。
ここは郊外だから、
動けないほど満員だったり、電車に押し込む駅員さんが居るほどではないけど。