君の知らない空


可哀想に……と思いつつ、
私と優美は美香を取り巻くおじさん達の様子を見ていた。


優美は課員ではないけど部長室の女子は優美だけだから、寂しかろうと課長の配慮で宴会の時はいつも呼ばれる。


「私たちが入社した時って、
あんなにちやほやされたっけ?」


ふくれっ面の優美の目が、今にも微睡みそうに潤んでいる。優美も相当飲んでいるようだ。


「いや、もっとあっさりしてた。
名前でなんて呼ばれなかったもん」


「だよね? 最初っから今まで、
私はずっと古賀さんだよ?」


「何言ってんのよ、
もうすぐ名前、変わるんでしょ?」


と言って肩を寄せると、
優美は真っ赤になった顔を両手で隠した。


まだ職場では誰にも言っていないが、
優美は半年後に結婚が決まっている。


ここ最近は式場や新居探し等の準備で、毎週末忙しいらしい。でも、それがまた楽しみでもあるのだろう。



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