君の知らない空
店に入った私たちは窓際の席に座り、月見ヶ丘駅前のロータリーを望んだ。金曜日の夜だから駅前は賑やかだ。
駅前には郊外の住宅街へと向かういくつかのバス停があり、バスを待つ人の列。
ロータリーには迎えに来たであろう車が、人を載せて出て行く。もちろんタクシー乗り場も同じだ。
この駅も町もたいして大きくないが、浜手にある工業地帯で潤っているようなものだ。私の勤める会社もそれらの工場へ資材を調達している。
「あれ、あそこにいるの美香じゃない? まだ帰ってなかったんだ」
優美が指差した方向、
ロータリーに並んだバス停に沿って歩く美香の姿が街灯に照らされている。
「隣にいる人、誰かな?」
美香の隣には、寄り添うように長身のスーツ姿の男性。
一見するとホスト風の小綺麗感じの男性が、美香の腰に手を回して歩いている。
時々、美香がゆるりと顔を上げる。
あの親密な様子は、どう見ても彼氏だろう。