君の知らない空


彼はゆっくりとした足取りで店内を一回りして、店を出た。陳列された商品を眺めていたが、ひとつも手に取ることはなかった。


私も後を追って店を出る。


彼に悟られないように十分な距離を保ちながら、周りの人におかしいと思われないように気をつけながら。


これじゃあ、まるでストーカーだ。
と思いつつも胸が高鳴る。


次はどこへ行くんだろう。


彼は通路の両側に並んだ店を眺めながら歩く彼は、特に何かを探しているようには見えない。きっと、ぶらりと涼みに来たのだろう。


白いシャツにカーキ色のチノパン、背中に背負った黒いボディバッグ。
彼の背中を見つめる私は、彼のことを好きになっているのかもしれない。


いや、好きになりたいと思い始めていた。


やがて彼は、通路沿いのオープンカフェへと入っていく。


数人の客が店に入るのを見送って、
私も店内へと入っていった。



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