君の知らない空
「そう、実は今ね……
私の両親との同居を考え中なの」
「ええっ、すごい、よかったですね」
「うん、それと……
下の子が出来るの、来年の2月に」
知花さんがそっとお腹に手を触れた。
とても幸せそうな顔をして。
「うわ……おめでとうございます。
彼方くんがお兄ちゃんになるんですね。
いいなぁ、楽しみですね」
「ちょっと年が離れちゃったけどね」
私がアルバイト先で知花さんに出会って間もなく、彼方くんがお腹にいることを教えてもらった。
その時と同じ気持ちが蘇り、胸がじんと熱くなる。同時に桂一と付き合い始めて、幸せだった頃の思い出も。
「やだ、橙子ちゃん泣いてるの?
ありがとうね、橙子ちゃんももうすぐだよ、前向いて行こう、ね」
知花さんは、涙ぐんだ私の肩を優しく抱いてくれた。
私は何て情けないんだろう。