君の知らない空

◇ 射程に入れろ!



風が、こんなにも気持ちいいなんて。


相変わらずの猛暑日で日差しは突き刺すように痛いけど、日傘の陰で肩越しの髪を揺らす風が爽やかに感じられる。


不思議と足取りも軽くなり、リズムを取りながら鼻歌でも出てきそうな。


いつもなら憂鬱な月曜日の朝だというのに、今日の私は違う。


私は決意した。
そして動き始めた。


一昨日の土曜日、彼を見送った後で私はスポーツジムへ行き、何の準備もなかったのにその場で入会の手続きをした。


そして昨日の午前中、美容院に行って思いきりバッサリと切ってもらった。


学生の頃から今までずっと、肩下20センチほどのストレートをキープしてきた。何となく切りたくなかったし、似合わないと決めつけて、切る勇気がなかった。


でも、それは違っていた。
肩にかからない長さのボブにしたら、気持ちまで軽くなった。


大げさだけど、世界が変わったような晴れやかな気分。


私は生まれ変わるんだ。
前に進むために。




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