君の知らない空
職場に着くと、やっぱり……
思ってたとおり皆の視線が痛い。
入社してからずっと、髪型は大きく変えたことがなかった。毛先を整える程度のカットか、カラーリングばかりで長さは変えてなかったから無理もない。
すかさず、優美が駆け寄ってくる。
「橙子、おはよー、髪切ったんだぁ!
思いきったねー」
「思いきったよー、軽くていいよ」
毛先を揺らして見せると、優美は食い入るように見つめて
「いいなぁ……私も切っちゃおっかなぁ」
なんて言う。
それはまずい。
「だめだめ、あと半年待ちなよ」
笑いながら私は、そそくさと鞄を机の下へと押し込む。優美の目を避けるように。しかし、
「あれ? 橙子、そんな大きな鞄でどこ行くの? 家出?」
と、気づいて覗き込んだ。
さすが優美だ。