君の知らない空


定時のチャイムが鳴った。
私はもちろん、帰るつもりで片付け始めるが美香は片付けようとはせず書類とモニターを睨んでいる。


「美香ちゃん、私帰るけど残業する?」


「はい、ここんとこを整理したいんですけど、残業してもいいですか?」


今日教えた発注システムの使い方は、正直なところ慣れるまで結構難しい。私も入社した頃には苦労したものだ。


美香はそれらをもう一度復習しておきたいと言う。


「橙子さん、先に帰ってください。私は大丈夫ですから、分からなかったら課長に聞きます」


にこっと笑ってくれたが、指導員の私が先に帰るのもどうかと思う。


仕方ない。
そんなに遅くならないだろう。
私も一緒に付き合うことにした。



< 75 / 390 >

この作品をシェア

pagetop