君の知らない空



それから一時間ほど、今日教えた内容をもう一度復習した。美香はマニュアルを広げて、教えたことを書き留めたノートに整理していく。


熱心な美香を見ていた私は、ふと視線を感じて顔を上げた。


打合せテーブルを囲んでいる男性社員が5人。その中でこちら向きに座る若者が、頬杖をついてこちらを見ている。


計器チームの江藤だ。
入社3年目で私より1歳上で、いつも周りに不特定の女性の影が見え隠れしていることから通称チャラ。もちろん女性社員の間だけで呼ばれている。


彼の隣に座る男性は腕を組み、唸っているように見える。こちらに背中を見せている二人のうち、一人は手にしたペンをくるくると回している。


打合せが行き詰まったのだろうか。




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