君の知らない空
電話を切った後、落ち着かなくて無駄に歩き回っていた。もしかすると会議の出席メンバーは、ほとんど車通勤じゃないかと焦りを感じずにはいられない。
ぼーっと周りを見ていたら、怒りや苛立ちを露わにして駅員さんを問い詰めている人たちが目につく。
そんな人たちを見ているのは不快だけど、自分はあんな風にはなりたくないと、次第に冷静な気持ちを取り戻すことができた。
駅員さんは何にも悪くない。駅員さんに怒っても仕方ないのに……
それにしても暑い。普段より人口密度が高くなってるからなおさらに。無駄な体力を使うまいと、私は缶コーヒーを飲みながら電光掲示板の見える駅の隅っこで屈み込んだ。
周りの人たちの様子を眺めたり、振替バスが出る様子はないかと気にしたり。
そうしているうちに気がついた。
私だけがついてないんじゃない。ここにいる人たちはみんな、ついてないんだ。
いつの間にか、胸に溢れてくるのは安心感。
ふと腕時計を見たら、時刻は7時50分。もう絶対に間に合わない。
ふぅと息を吐いて顔を上げた。
「はい、復旧の目処がつかないそうで、バスも出るのか分からないので、今から歩いて行きます」
目の前を颯爽と駆けていく若い女性。きりりとした横顔には、暑さなど微塵も感じられない。
そうか、歩けばいいのか。