君の知らない空


彼は着替えが済んだら、きっとこのフロアに来るはずだ。
と思っていた私の当ては外れた。


いつまで待っても彼は来ない。


マシンの使い方を一通り教えてくれたインストラクターの女性は、既に私の傍から離れている。しかし時折やって来て、何か困ったことはないかと尋ねてくれる。


申し訳ない。
きっと私が彼の姿を探して、きょろきょろしているからだろう。不自然な行動に付き合わせてしまっている。


困ったことと言えば、
彼の姿が見当たらないことに他ならない。


そんなことをインストラクターの彼女に訊ねる訳にもいかず、
「何でもないです」
と、私はにこやかに返すしかなかった。


しかし何時間待っても彼に会うことは出来ず、私は仕方なく帰ることにした。


また明日もある。



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