君の知らない空
ジムの帰りにプールを覗いて彼の姿を眺めるのが、私の習慣になった。
ガラス越しに彼を見ている私は、変な人と思われているのかもしれない。だけど、他の人に何と思われても構わなかったし、気にするものか。
私は彼をすぐに見つけることが出来た。プールにいる人たちは皆、似たような格好をして同じように見えるけど彼は違う。
彼が水面を滑るように泳ぐ姿は、自転車に乗っている時よりも軽やかで輝いている。まるで水面を漂うように。
「高山さんもプール始めます?」
と沢村さんが言った。
毎日プールを眺めてから帰る私に気づいたようだ。
「とんでもない、私はいいです、ただ……気持ちよさそうだから」
「水の中はもっと気持ちいいですよ」
沢村さんの言うとおり、彼の姿を見ていると気持ちいいのだろうと確かに思える。彼を見ている私も十分気持ちいい。
少しでも彼のことを知りたい。
いつかきっと、チャンスはやって来ると信じて。