君の知らない空
♯3 忍び寄る闇
◇ 接近
美香が入社して一ヶ月、私は指導員の任務から解放された。
「高山さん、ありがとうね。後は私がビシビシ鍛えるわ」
山本さんはにこやかだが、その言葉が冗談なのか本気なのか迷ってしまうほど口調はきつい。
「よろしくお願いします。
美香ちゃん、後は山本さんに教えてもらってね。わからないことがあったらすぐに聞いて」
「はい、ありがとうございます」
美香を山本さんに引き渡して席に戻ったが、大丈夫だろうかと気になるものは仕方ない。
そっと様子を覗いたら、美香の隣に山本さん。何か早口で言っている背中は、見ているだけでヒヤヒヤする。
美香はちゃんと聞けてるのかな…
そう思いながら、机に積んだ受け箱に手を伸ばした。
すると、また江藤と目が合った。私が驚いて目を逸らすより早く、江藤がにこっと笑う。
最近よく江藤と目が合う。
いや、江藤が見ている気がする。
さり気なく机に目を伏せたけど、嫌な予感が胸で疼いている。
いやいや、私はあんなチャラに興味はない。