君の知らない空


「チャラさぁ、江藤ってさ……最近変よね」


優美に言われて、なぜかドキッとした。
何にもやましいことなんてないのに……まるで私の思い上がりだ。


「何が変なの?」

「ん……髪型」

はい?
今さらそんなこと?

「え? 髪型?」

きょとんとした私を見て、優美が笑った。

「冗談、あのフワフワ頭は前から気になってるけどね、あれは絶対禿げそうにないよ」

「なんだ……それはそうだね、あれは禿げないで白髪に変わるタイプだわ。で、何が変なの?」

優美が口を噤んで、辺りを警戒する。


事務所を出て、廊下の真ん中にあるリフレッシュコーナーはガラス張り。目の前の廊下を通り過ぎてく二人の社員を見送って、優美が口を開いた。


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