君の知らない空
今日も帰りにジムに行く。
パターンからすると、今日は彼が来てるはずだ。
急いで仕事を片付けて帰ろうとしたら、美香が私の席にやって来た。
「あの……橙子さん、急いでますか? 」
え? 何?
何だか、嫌な予感。
「え、ううん、べつに急いでないけど、どうしたの?」
「ちょっと話しが……相談したいことがあるんです……」
遠慮がちな小さな声。美香の顔に明るさは感じられない。何か真剣な話なんだと、一目で分かった。
そんなこと言われたら断れない。
「うん、いいよ。じゃあ食事でも行く?」
「はい、ありがとうございます」
美香は顔を綻ばせて、ぺこりと頭を下げた。
彼を見れないのは残念だけど、
美香の笑顔が可愛いから許そう。
でも、嫌な予感は消えなかった。
事務所を出ていく時、私たちを追いかける視線は確かに感じられたから。