君の知らない空

美香の車は女の子らしい小型車で、とてもいい匂いがした。甘過ぎず上品な香り。

「美香ちゃんらしい可愛い車だね、いいなぁ」

「橙子さんは車乗らないんですか?」

「うん、実は免許持ってないんだ。学生の時、遊ぶのが忙しくて教習所に通い損ねたから」


そうだ、学生の頃は学校とバイトと桂一でいっぱいだったんだ。


それに自宅は駅から近いから、移動は徒歩と電車さえあれば不自由ない。幸い必要な店や行きたい店は、駅から徒歩圏内に揃ってる。


「今からでも大丈夫ですよ、免許取りに行きましょうよ」

「うーん、年だからなぁ……
でも車があると行動範囲が広がるね」

「そうですよ、頑張りましょうよ」


たわいない話をしているうちに、車は小さな洋食屋さんに着いた。美香がよく来るという店内は、木の温もりで溢れている。


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