君の知らない空
よいしょっ、
と心の中で勢いをつけて漕ぎ出す。
早く帰って、早く寝て、
明日こそはジムに行くぞ!と意気込んで。
しかし二、三回漕いですぐに、私の勢いは消沈してしまった。
高架の向こう側に現れた人影。
遠くて暗くてよく見えないが、二人並んで歩いてくる。
カップルだろうか、二人ともそんなに背は高くないけど?
いや、男性だ。
あれは二人とも男性だ。
彼らはこちらに気づいていないのか、横並びになったまま。イヤフォンをつけているから話を声は聴こえないけど、何だか不気味に感じた。
避けてくれたらいいのに……と私が思ってることなんて伝わりそうにもない。
早く通り過ぎてしまおう。
壁際に自転車が停まっていない場所を見つけた私は、そこを目指してペースを上げていく。
ちょうど駐車した自転車が途切れた隙間に自転車を滑り込ませると、不意に彼らの体が傾いた。