君の知らない空

何で？
ぶつかる！


慌てて避けようとしてバランスを崩して、私は片脚を着いた。


すると一人が自転車の前かごに手を伸ばし、素早くバッグを掴み上げる。


盗られる！


取り返そうとハンドルから手を離したら、ハンドルに引っ掛けたバッグの肩紐が引っ張られて自転車ごと持って行かれそうになる。


訳が分からず怖くて声も出せないけど、絶対に盗られるものかと自転車を支えながら必死に手を伸ばした。


バッグを掴んだ男は、さらに強引に引っ張った。


「やめて！」


ようやく声を絞り出したら、もう一人が焦ったように駆け寄ってきて自転車を蹴り飛ばした。


転んだ瞬間、耳のイヤフォンが外れた。
ハンドルに引っ掛けていた肩紐も外されて、彼らの手に私のバッグが握られている。


彼らは駆け出した。


バッグから垂れ下がったイヤフォンが、悲しげに私を呼んでる……助けを求めてる……気がした。


「待って……！」


私のバッグが……