君の知らない空
私は恐怖で立ち上がることも出来ず、彼らの背中を見送るだけだった。
本当は縋ってでも取り戻したいのに……
と思ってたら、
駆けていく彼らがぴたりと足を止めた。
私の願いが届いたのか?
そんな訳ない、あるはずない。
だって、彼らはこちらを振り返らない。
すると突然、彼らの怒声が響いた。
高架下の静寂を掻き消す声は、彼らの向こうにいる誰かに向けられている。
ここからじゃ暗くて、背中越しにも姿は見えない。そこにあるのはただの人影。
その影に、彼らが踊り掛かる。
喧嘩だと気づいたらすぐに、彼らは呻くような声を上げた。
やがて前屈みになった彼らは、何度か呻き声を発して立ち去っていく。
目の前で何が起こってることが理解出来ずにいたら、彼らの向こうにいた影がこちらに向かってきた。
恐怖心がさらに加速する。
もはや胸が苦しいほど速くなってく鼓動を抑えることよりも、息をするのが精一杯だった。
でも確かに、私は胸の中で桂一の名前を呼んでいた。