お握りに愛を込めて
思っていたことが顔に出ていたのか、“うん、うん”と頷いた彼は、話し始めた。


「桜さんの彼氏の……」

「高野光太郎!」

「そう!その高野くんと俺の兄貴が友達で、一度、桜さんが持って来たお握りを兄貴経由でもらったら、めちゃくちゃ美味くてさ。
大絶賛したら、妹が作ったって言っててさ、それで……」




あ〜、なんとなく理解出来たかも。


桜姉ちゃん、料理できないもんだから、光太郎さんとのデートの時は、必ず叩き起こされて、お弁当作らされるんだよ。



そのお弁当を、この人が食べたってわけね。



「だから、お握り繋がりで俺と君は、知り合いってわけ」

にっこり笑って、そう言い切った彼に、


「はぁ〜!?」


すごい剣幕で睨み返した。

何が知り合いよ。

そっちが一方的に知ってるだけでしょ。


それも私じゃなく、私が作ったお握りを知ってるだけじゃない。



彼と私の関係を、きちんと説明したら、


私の姉の彼氏の友達の弟……って、遠っ!


何の繋がりもないっ。


「ただの赤の他人ですっ」

「そんな寂しいこと言わないでよ〜」


そんな潤んだ瞳で言ったって、他人なものは他人なのっ。 

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