お握りに愛を込めて
放課後
“菜子ちゃん〜”
そう言って潤んだ瞳を向ける彼を思い出し、今日はお握りどうするんだろう。なんて気になって。
でも、私には関係のないことだと自分に言い聞かせる。
それでも、何故か後ろ髪を引かれる思いをしながら、丸徳スーパーのタイムバーゲンに行くために靴を履き替え、昇降口を出た。
ごめん、水沢先輩っ。
って、なんで心の中で彼に謝ってんだろう。
あの、潤んだ瞳……
今日のお握りは、誰が握るの?
ああっ、関係ない。関係ない。
私には関係のない話。
昼休みの彼を忘れようと、頭をぶんぶんと横に振っていた時、
「すみませ〜ん!米20kg、どこに運んだらいい?」
校門前で、農家のおじさんが丸坊主頭の男子生徒に話しかけている姿が見えた。